新年明けましておめでとうございます。
負からの飛翔
本年は「酉年」ということで、大きく飛翔する年になると、ほとんどの年賀状に書かれておりました。昨年の干支は「申」で天神様の遣いで福をもたらすと、歓迎されました。しかし、昨年は地震に始まって、颱風、水害、さらに予想外の人災もありました。また、年末から年始にかけてスマトラ沖大地震による災害など。更に、出口の見えないイラク戦争や、北朝鮮の拉致問題など不安な年でした。
しかし、昨年の事として、終わって訳ではなくそれらを引き継いで、新しい年を迎えました。21世紀は20世紀に生んだ負の遺産を償う世紀になる、と言われていた事が現実となってきました。
私達は一体どうしたら良いのでしょうか。一人一人がしっかりと考えて行動しなくてはなりません。負から正への飛翔の年にしたいものです。
剪画美術館構想を
協会としては、昨年は「年賀状展」に始まり、本部展、巡回展、支部またはグループ展、会員の個展、研修会、作品集、図案集の発刊、卓上カレンダー、壁掛けカレンダーの制作、販売、そして11月には第2回ニューヨーク展の開催など、大変充実一年だったと思います。
本年も、昨年の活動をベースにして、さらに、発展的な活動を目指して行きたいと考えています。特に、昨年の事業計画の中で「剪画美術館」の開設が提案されておりました。今年は一歩進めて開設のためのプログラムを作り、具体的に開設プロジェクトなどを設置してゆく予定です。
また、今春には、小野寺事務局により、ご新築の一部屋を「剪画ギャラリー」として開設も計画されております。具体的には、小野寺事務局の構想を後日お知らせ致しますので、会員各位の積極的な協力を仰ぐ次第です。
毎年、掲げております「会員増」ですが、徐々に増えては居りますが、高齢者の退会もあって思う様に増えてない状況です。これは、本部の活動ばかりではなく、会員一人一人がもっと、もっと協力して、会員増への活動を進めて頂きたいと切望致します。その際、入会方法へのご意見やご提案ありましたら、事務局または私宛にメールや手紙などでお寄せ頂けましたら有難いです。
また、海外展もアメリカばかりではなく、アジアやヨーロッパ等にも計画をして行きたいと思っておりますし、作品集、図案集VOL-2の発刊の計画も進めたいと思います。「うちわ展」や「年賀状展」の様に、一般の方に剪画を観てもらい、時には体験して剪画をもっと多くの人に知られる活動も続けて行きたいと計画中です。これらの事業計画は新年度のNPO法人の総会で検討され、会員各位にお知らせ致します。
ニューヨーク展のご報告
一昨年に引き続き、昨年も年末を翌月に控えた11月に開催致しました。会員の皆様にも、展示会場を観ながら、現地の方との交流と観光も兼ねて、ニューヨークツアーを計画しました。結果として、小野寺会員と私共夫婦でのツアーとなりました。私の拙いニューヨーク展の報告をお読み下さいまして、次回のツアーには是非ご参加されます事をお薦めいたします。
このニューヨーク展では、早い時点から小野寺会員が東奔西走されました。現地迄行かれて会場を決めたり、作品をスーツケースに入れて運んだり、会場での展示のための準備作業から、運搬、展示、レセプション、デモンストレーションの準備など、枚挙にいとまがない程の尽力がありました。ニューヨーク展の成功は、偏に小野寺会員のエネルギッシュな活躍と、現地での中西さん(文中で紹介)のご協力により、立派な成果を上げました事を、最初にご報告させていただきます。
ニューヨーク展を中心にした、私共のツアーのご報告とし、次回参加して頂く会員の、ご参考になれば幸いと思っております。
11月7日(日)
11時の定刻に、成田空港から快晴の空に向かってニューヨークに飛び立ちました。
(中略)
11月8日(月)
ホテルに到着し、フロントでチェックインを済ませ、タイミングよく小野寺会員に会う事ができました。この日はメトロポリタン美術館へと向かう予定でしたが、月曜日で休館という事で、かわりにグッケンハイム美術館に行きました。
11月9日(火)
この日は、午前中に街を歩き、午後から15West 44TH Street にある日系人会に向かいました。展示作品を中西さんが車で運んで来ていて、上階まで数回に分けて運び上げました。日系人会の関係者にご挨拶をして、いよいよ展示作業です。
展示壁面はおよそ三面ですが四十数点を、どの様な流れでレイアウトするかひと思案です。全作品を箱から出して、およそのテーマ毎にグループに分けて、それをカラーとモノクロに分け、額の大きさも考えて展示予定の壁面の下に並べて観ました。数回作品の位置をあれこれ並べ替えて、更に、小野寺と再検討し決定しました。壁面への取り付けは私と家内が担当し、小野寺会員と中西さんは明日のレセプションの飲み物やスナックや軽い食べ物の調達に出かけました。
展示作業は五時過ぎに終わりましたが、展示中に作品を観にホールに、日本の方ばかりではなくアメリカの方もちらほらと入って来て、作品を見入っておりました。展示作品に囲まれていると、ニューヨークに来ていると言う感じよりも、東京のどこかで展示しているような錯覚をおこしていました。でも、窓の外の風景を観ると、徐々に、ニューヨークで作品を展示しているという、実感が沸いて来ました。会員が一緒にここで観る事ができたら、更に感激が深くなったと思いました。
11月10日(水)
会場にて4時から私が作品制作のデモンストレーションをやることになっていましたが、沢山の方が集っていたので、少し早めに作業を始めました。小野寺会員が用意してくれた作品の図案を、黒い紙にホチキスで止めて、マットの上から切り始めます。私が、制作の手順を日本語で話し、それを中西さんが通訳して英語で伝えてくれました。
ところが、私の説明が長過ぎて気が付いたら通訳なしで進めていました。席の前の方に日本の御婦人達が熱心に見て、聞いてるので、ついついその人たちに説明するのに一生懸命になっていて、日本の美術論まで話していました。後で、明日のデモンストレーションの時は、説明をもっと短めにして下さい、と小野寺会員に注意を受けてしまいました。中西さんも困ってしまったのです。
切り始めてから間もなく、その紙はどこで手に入るのか、カッターは…、糊は…、図案は自分で描くのかなど、次々と質問が出てきました。小野寺と手分けをしてその質問に答えました。中には「作品に奥行きを感じるが、その奥行きはどのようにして出すのか」などと、専門的な質問が飛び出すこともありました。2時間ほどデモンストレーションをして作品を完成させたました。
とにかく参加者の熱心さに驚きました。どなたか、チャレンジしてみませんか、と呼びかけましたが、それには応答はありませんでした。少し難しそうに見えたのかも知れません。
その後、ワインを飲みながら歓談しました。ニューヨークで日本舞踊を教えているという方が、「剪画の精神も、日本舞踊の精神も全く同じで感動しました。」と言われました。また、「全ての作品に日本の歴史が秘められていますねえー。」と感慨深そうに話す方もいらっしゃいました。
「こんな素晴らしい作品は滅多に観る事が出来ないので、来年も是非、お願いします。」と深々と頭を下げた方もいました。「カラーよりもやっぱりモノトーンの作品の方が深みがあって良いですね。」と、作品を指し示しながら、話された方も。
どなたも、感想をさりげなく話されていました。この辺りが日本の熟年の人たちと違う処かと、感じ入ったりしました。ご参加のご婦人に、何年位ニューヨークにお住まいですか、とお聞きしたら、「私はまだ新人で、30年ですが、皆さんは35年以上の方々ばかりなんです。」とおっしゃっていました。
11月11日(木)
日系人会にほどなく着くと、数人の鑑賞者が熱心に作品を観ていました。こちらで活躍している日本人のカメラマンや、私の知人たちが、日本からDMを送って知らせた方も何人か見えていました。隣の州のニュージャジー州、ショートヒルズの町から知人のNご夫婦も来て下さいました。N振りにお会いするのです。この方は日本人でアメリカの大きな保険会社の日本支社の社員でした。東京にお住まいの頃、私の大きな作品をお買い上げ戴いてからのお付き合いです。こちらに住んで20年近くなりますが日本には帰る気はない、とおっしゃています。
すっかり話に夢中になり、デモンストレーションする時間もなくなってしまい、簡単に剪画のテクニックの説明をして終わりました。今回は質問はありませんでした。この日は遅くまで会場で、ワイン等飲みながら歓談しました。
11月12日(金)
いよいよ、ニューヨーク滞在最後の日となりました。小野寺会員とロビーで待ち合わせをして、地下鉄で美術館の近くの駅まで行きました。外は強い雨です。でも、傘をさして歩いている人は少なく、小野寺会員もコートを着ただけで、普通に歩いてます。数分歩くと、ゴシック形式(新古典主義)の威厳を放っている建物…メトロポリタン美術館が我々を迎えてくれました。
この美術館は世界四大美術館のひとつで、コレクションの数は二百万点を越えるそうです。三時間ほど美術館にいたのですが、疲れは感じません。作品を観た興奮が全身を活気付けていました。
夕方七時にはホテルを出て、ミュージカル、ディズニープロ制作の「Beauty and The Beast」(美女と野獣)を観に行きました。
部屋に戻り、荷物の整理をしましたが、いろいろと荷物が増えてしまったので、スーツケースには入り切りません。なんとか機内持ち込み用にバッグ他手荷物にまとめました。
11月13日(土)
朝6時にモーニングコールで起床、最後のチップを枕の下に入れて、7時にフロントに行きチェックアウトをしました
13時間のフライトで、日本時間14日(日)午後3時半に無事成田空港に着陸しました。そこから乗り物を乗り継いで、山梨の自宅に夜の10時近くに帰りました。小野寺会員はは私達よりも、1週間後の21日に帰国しました。
今回のニューヨークの滞在は短い日程でしたが、作品展の成果は、様々に挙げられます。一番強く感じました事は、ニューヨークで、日本の伝統文化をベースにした剪画が、新しい美術として大変な関心を呼んだという事でした。一昨年、昨年と日本の歌舞伎や演劇がニューヨークで大変な話題となり人気を博しましたが、これからの国際交流は政治力や経済力でなく、「文化力」だと思います。
今後、剪画を中心に、もっと積極的に日本の文化を紹介し、海外との交流をはかる努力を続けて行きたいと思います。ニューヨーク展にご協力いただきました会員の皆様と、公私にわたり大変お世話になりました小野寺会員と中西さんに、心から御礼申し上げます。
この、ニューヨーク展のご報告を7月に開催予定の、第21回剪画展の「研修会」で行います。多数のご参加をお待ちしております。
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