「おわら風の盆」の里、越中八尾で
第8回坂のまちアート展に参加
風の盆、月見のおわら、そして坂のまちアート展。
越中八尾の秋は駆け足で過ぎて行く。
風の盆の何十万人の観光客から解放されたかのような風が町中を通り過ぎていく。家々の玄関、格子戸には野の花が飾られ、町の人々もなんとなく余裕が感じられる。最近とみに有名となった「風の盆」も素晴らしいが、人出も多くなってきた。八尾のまちの普段の顔に近いこのアート展に訪れて、是非とも「おわらの風」を感じてほしい。
最近は130名くらいのあらゆるジャンルの作家が応募し、実際の出展者は70数名の作家に絞られるという。そしてそれぞれの作品は、旅館、商店、普通の民家等あらゆる場所に展示されることになり、町全体がアート会場と化す。私の作品展示会場は、なんと駐車場。しかしこれが期間中はみごとにギャラリーに変身。入り口には近所のご婦人方による野の花アートが彩られ、会場もカラスウリでアレンジされる。
作品ジャンル「剪画」として3回目の参加となり、入場者も顔見知りが増えた。1回目のとき「切り絵とどう違うんですか?」と質問していた人が今は剪画と向き合っている。
「ここの所切っていないのに線が見える!あっここも!」などと完全に自分の目で線を引いている。こんな時が、鑑賞者と一緒になれたと実感する瞬間である。作品のあちこちを省略して隠した線を、自分の眼でたくさん引いたご婦人が次の日も来てくれて、「どうしてもこれがほしい」と原画を持ち帰った。
富山県ばかりでなく遠方からもはるばると来られた方もおられ、入場者が増えてにぎわった。
「風の盆」が終わった後、静かな秋を迎えていた八尾にこの「坂のまちアートinやつお」が完全に秋野風物詩として加わったことを実感した。
それは「風の盆」で観光客でごったがえす八尾とはまた別の、アートを通してその素朴な姿を見せるときでもあるような気がしてならない。
「去年観て、どうしても友達に見せてやりたくて連れて来ました。」
そんな入場者の言葉に励まされながら、「来年も参加して、もっとたくさんの人に剪画を見ていただきたい」と心新たに、第9回坂のまちアート展に向かって、また新たな制作を始める。
(菅谷茂)
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